夏は何処へ?

ありがたいことに夜になると日中の暑さが鳴りをひそめ、明け方は時折寒くて目が覚めることもあるという、恰好の燗酒日和がつづいておりますな。雨もそこそこ降っていますから、湿度が鬱陶しいこともありますが、この時期にエアコンなしで過ごせるなんて、珍しいこともあるもの。
まったくこのお天気の狂いようって、何なのざんしょ。

旭菊■旭菊 純米古酒 H5BY
稀に試飲をおすすめすることがあるとはいえ、いつ開けたのやら思い出すことも適わぬほど常温で放置されていたもの。なれど、冷やでもまだまだうまみがしっかり。こりゃ、枯れるのは当分先ですな。

飛び切り燗(55℃近辺)までで止めるつもりがつい軽く煮ちゃいましたが…
「ウンマ〜い♪」
味は多からず、そして少なからず。トマトの酸味・甘みをしっかり受け止めながら、なおかつ酒のうまみを味わわせる。いい酒ですな、これ。

アテは、トマトと卵の炒り煮。煮汁まで啜っちゃいましょ。
ハム・セロリ・青紫蘇・シメジのサラダで口を直しながら、杯がすすむこと。
その傍らにはトマトとレタスがてんこ盛り
前日から持ち越していた夏野菜のラタトゥイユも平らげて…

この日はなんだか “トマト・デー”。
トマトのいただきものでもありましたかな。:-)


酛摺教燗法会

まっとうな燗酒を嗜む方々なら異論はないでしょうが、今、生酛造りといえば…
第一人者はもちろんこの人、久保本家酒造(奈良県)の加藤杜氏ですよね。
その加藤杜氏が、お燗名人、燗付師の異名を持つ小森谷嬢(同社)を伴われて、東北各地の布教活動の最後に薄酒の地へお越しとあらば、やはり “ここ飲み屋かい?” にお招きするのが上策、と参加者を募ったら…

布教はご本職のFご夫妻と横浜からお見えのご友人Yさん。水戸からは広報部長ちゃむさんが前日のお江戸での会に引き続き。柳都からはヒヨコ豆之助さんが長岡のご友人Oさんとお誘い合わせて。終えたら車中泊という長岡の猛者Aさん。薄酒の地から酛摺教に魅せられて蔵人になってしまったKさんとご賢姉。
酒の縁に導かれた諸姉諸兄が、“ここ飲み屋かい?” 二階にご参集♪

刺身盛合せ“ここ飲み屋かい?” の泣き所はやはり、「温かいものは温かく」ができない料理でしょうか。

しょうがなく、地元でもまっとうな料理を出してくれる仕出し屋さんにすがって、ご覧のお刺身や料理を作ってもらい、加えて出雲崎名物、石井魚屋さんの “アナゴの浜焼き”、ヒヨコ豆之助さんのお手を煩わせた鈴木食品の “袖振り豆腐”、自家製 “わらびの味噌漬” などをご用意。

写真を撮り忘れてしまいましたが…
料理ちゃむさんのおみや “奥久慈の軍鶏” と「食べるときに届けます」といってもらった、たぶん佐渡産 “岩牡蛎” も。

まずは加藤杜氏手ずから注いで回ってくださった
■睡龍 生酛純米吟醸 H15BY
でかんぱ〜い♪
次いで、小森谷燗付師の手によるお燗を受けたこれが回ると…
きれいな口当たりの後で、控えめながら強さが顔を覗かせまする。純米吟醸ならではの品格と生酛ならではのきれいな深みある味わい。
「今飲んでしまうのはもったいなかったかなぁ」と杜氏自身の口から漏れた一言がお酒のすごさを如実に物語っています。
秘蔵のH15BY、この顔ぶれで飲めて良かったねぇ♪

img1091_070630_3この日のために用意したお酒は…
■睡龍 生酛純米 H15BY
■睡龍 生酛純米 “おこぜ” H16BY
■生酛のどぶ H17BY仕込13号+9
■睡龍 純米無濾過生原酒 H18BY
「これ、10%ほど割水しました」「今度はブレンドで」
などなど、燗付師の手から繰り出されるマジックの数々。“純米燗” ならではの妙味に、飲み干す杯もいつになく軽い?

“どぶレンジャー” 総帥としても知られる加藤杜氏ゆえ、この日も「生酛のどぶをずら〜っと並べて…」とも思いましたが、「せっかくなけなしのH15BYを供出するのだから、本来の姿を知ってもらおう」と炭酒蔓延の地では、“どぶ” は初心者用だけに絞り、敢えて “澄み酒” をメインに据えてみましたが、いかがでしたでしょ?

しかし、ご本職はおられるは、「お坊さん?」と間違えられそうな加藤杜氏はおられるは、まさしく法会と呼ぶに相応しい集い。
こういう経験は滅多にできるものじゃありませぬ。(笑)

鄙の隠れ処にわざわざご参集いただいたみなさま、お疲れさまでした。そして、ありがとうございました。
こちらの我が儘から、杜の都での一回休みをはさみながらもお越しくださった最強のコンビ、加藤杜氏と小森谷嬢にこの場を借りて心からお礼申しあげます。
さらに、この遠征を認めてくださったお蔵元にも感謝を。ありがとうございました。


浮気心 -2-

人並みに休肝日をとったときの回復力を見ようと二日も酒を断ったのですが、「さて、健康診断だな」と出かける時間を気にしていたら、そんなときに限って次から次へと訪ね来る人あり。用を済ませて時計を見やれば…受付時間が終わっていました。
不承不承二日間堪えていたのは、何のためだったのか…。orz

水尾■水尾 特別純米酒 “金紋錦仕込み”
たぶん18BYのはず。ひょんなことからゴールデン・ウイークに入手しましたが、開栓したまま延び延びとなって、二ヶ月近く常温に置かれておりました。
“金紋錦” は “たかね錦” を母に、“山田錦” を父に持つ酒造好適米。舐めたらたっぷりと酸が出ており、「好みが分かれるか」と思いつつ、そのひと癖にほだされて…。X-)

熱燗(50℃近辺)超から冷ますと、味の幅は感じさせるものの、強さには欠けるでしょうか。酢と合わさると、途端にボディが痩せてしまうのが惜しまれるところ。
“−2” でとどめず、もっとしっかりメーターを切ってくれたら…。当然、酸もさらに出るでしょうが、それこそ奥行き・ボディ、ひいては熟成の土台となるものですから、願ってもないことなのですけどねぇ。

とはいえ、某D誌などで取り上げられたあれやこれや、燗をつけてもうまみがふくらまないばかりか、香りと甘が邪魔をしてくれるヨワヨワ酒ばかりで辟易しておりましたから、久しぶりに呑める長野の酒に出会ったことは重畳ですな。流行りのアルプス酵母に奔らず、長野県発祥の7号酵母や “金紋錦” で醸すというスタイルはあっぱれなだけに、仕込みも伝統に沿った健全醗酵を…と思わずにいられませぬ。

しかし、四合瓶ってつまらないですなぁ。どうせ手を出すならやはり一升瓶じゃないと…。つくづく思ってしまいまする。