定番の実力 -乙酉葉月乃伍-

久々、五週間ぶりの休み。それも一日だけ。
「我が輩の辞書に"夏休み"という文字はない」。orz
『銘柄非公開』
同じ蔵元の1,850円/1800ml(税別)の純米酒。1,700円のものとの違いは、麹米、掛米ともに酒造好適米を使ったこと。
酸は目立つが、ふくらみもあり、余韻の素っ気なさも解消されている。このあたりの差は、ひとえに原料米によるものだろう。結果として、アルコール分14%台という薄さは感じないし、バランスはこちらが断然良い。
後に残る若干の苦は、16BY酒であろうことを考えれば、許容範囲だ。
またもや苛めを。飛び切り燗(55℃近辺)から冷ます。ふくらみも増し、余韻もそこそこ。酒としてのまとまりはある。が、全体を支配するもわ〜っとした香味は、好みから外れる。並んでいたら手を出すかと問われると、しばらくの躊躇の後、通り過ぎてしまうだろう。
蔵元としては、リーズナブルな価格で、純米だからと肩肘張らずにまず飲んでもらおう。そして、あわよくば、定番のさらにまっとうな純米酒への登竜門としたいという意図だと思うし、純米酒の底辺を広げる意味でも有効な試みだとは思う。しかし、そこに潜んでいる危うさを思うと、その試みが賭けのようにも思えてくる。
まっとうな酒を造る上での最大のコストは、かける手間暇もさることながら、目に見えるのはやはり原料米の代金だろう。それゆえ、低精白の純米酒も数多く登場しているが、米のツケだけは誤魔化してみようがない。そして、そこでの無理は最後まで響く。
この酒を素直に受け容れてくれれば良し。「純米酒、うまいと言ってもこんなものか」と、無理をした酒で決めつけられ、まっとうですばらしい純米酒も同列に見られてしまうこと。それが最初に値段ありきの怖さだ。
前の1,700円といい、この1,850円といい、級別制度があった時代そのままに全国的に横並びで用いられているレギュラー酒の値段を踏襲したもの。消費者の乗り換えへに対する違和感も少ないと踏んでの値付けだろうが、もともとアルコール添加に加え、醸造用糖類や酸味料まで添加した三倍増醸や良くて糖類無添加の普通酒、アルコール添加を規定量に抑えた本醸造がほとんど。かつて米不足でズタボロにされた不幸があったとはいえ、潤沢に米が使えるようになっても残り、米余りの現代でも未だ蔓延る日本酒擬きの酒。それらと同じ値段で純米を造る。そのことにすでに無理はないのか。
純米ならではの持ち味を十分に堪能してもらい、飲んだ量を自慢するためでも、ただ酔うためでもなく、食とともに味わい、語りとともに酌む。それが日本酒というものであること。その酒は、決して日本酒擬きと同じ値段ではできないこと。それを正しく理解してもらう手立てはないものだろうか。
『鷹勇 純米吟醸"強力の郷"H12BY』
まろやかな口当たり。含むと、口の中いっぱいに広がる旨みで、飲み込むのが惜しいほど。香味のまとまりも良く、余韻も申し分なし。しみじみうまい。
「純米って、燗酒って、やっぱこうでなきゃあ」。王道そのものの風格さえ感じる。
まっとうな純米酒を広めるには、やはり正攻法でいきたいものだ。
バチマグロ赤身をヅケで。漬け汁が回り、水っぽさがなくなった。赤身を食べるなら、この一手間を惜しんではいけない。
豚肉の塩胡椒炒め。しっかりした味付けで酒が進む。
トマト・若布・茗荷のサラダ。調味料なし。:-)

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