恒例となった木曾の佐藤阡朗さんの52回目となる『たらの芽通信』を拝借いたしまする。
 

人の美しさ

 
 人の笑みに逢うと気持ちが和む、赤ちゃんの瞳は、私をジーッと問い正す。
 創った物を館展審査の場で診てると随分といろんなことを勉強させられる。人は先ず以って自分の幸せの為に動き活きてゆく。殆どのひとは余程の(天の邪鬼)か(奇人)以外は自分の為に生きるであろう。しかし司馬遼太郎氏は晩年小学校五年生用教科書「廿一世紀に生きる君達へ」の文章の冒頭に「世のために尽くした人の一生ほど美しいものはない」と言っている。では自分のためだと美しくないのかと言う事になる。
 昔から城下町の通りの店では、早朝の掃除や雪掻きで、両隣の1間まで箒目を立て掃いたものだった。お互いの境目が一番綺麗だった。弟子や丁稚は出遅れを恥とした。日本人に遺伝子として組み込まれた何かが相手に負担を掛けない範囲での気遣いを伝統にしてきたのだろう。
 この国にはこのような「恩送り」の精神文化が生きている。自分の享けたり、授けたり、承けた幸せや恵みを感謝と共に次へ送る事を無意識にやってきた。
 これは自分の喜びとして自分のためにする事だから精進し合って回りを浄化するのだろう。無垢の行動でそうしていた時代からは、綺麗さしか生まれなかったに違いない。時代は人を作る、人が時代を創る。無意識で尽くしたいものだ。この一年、あの嬰児のつぶらな瞳に向き合える年にしたい。

 2017年 平成29年酉 1月

佐藤 阡朗

(原文のまま)
 
改めて、穏やかな一年でありますように!