いつ来るんかい? “大和編” -4-

甑翌朝4時。温かな布団から抜け出て蔵へ向かうと、建物からは既に湯気がモウモウと噴き出しています。
また蔵の一日のはじまり♪
釜場では、前日、専務が「ここは標高(大宇陀は320mほど)が高いんで、上がりが悪いんですわ。103℃やったかな」と話してくれた蒸気を見守るMさんが…。
あの…
一に蒸し、二に蒸し、三に蒸し!!
酒造りの原点がここに込められておりまする。

前日、“洗米”を終えた米たちが出番を待っていました。
米のうまみがギュッと詰まったいい酒になっておくれ♪

蒸し前原料米

 
櫂入れ仕込タンクの回りに組まれた足場の上では、命綱を着けたヨッシーが朝の日課、“櫂入れ” を一人黙々と行っておりました。

造りは、ようやく最初の生酛純米(13号)の “上槽” を迎えようとしていましたから、まだまだ先は長丁場。来月上旬の“甑倒し”はもちろん、無事に“皆造”が迎えられるよう願って止みません。

横着者はこの後、また布団に戻って夜のためにもう一眠り。(笑)

2回目の朝ごはんをごちそうになり、専務と小森谷嬢に見送られて、大宇陀を後に。
次回訪れるなら、やはり “酛摺り” の時期に来なくてはなりませんな♪
専務、親方、小森谷嬢、蔵人さんたち、そして久保家のみなさま…
いつもながらたいへんお世話になりました。ありがとうございました。

久保本家編はこれでお終いですが、まだ旅は…

【大和編お終いなれど、つづく】


いつ来るんかい? “大和編” -3-

色紙お客さまたちが帰られた後は、部屋でストーブに当たりながらビッグコミック・オリジナルや『蔵人 クロード』を読んだりしながら、夜に備えて身体を休めておりましたが、きき酒というより試飲した酒も手伝って、またウトウト。
何しろ齢が齢ですから、夜通し駆けての遠距離遠征はだんだん辛くなっておりまする。こちらはまだ近い方ですが、鳥取や島根、広島まではよほどコンディションが良くないときついかも知れませぬが、他に移動手段が…。
それよりも「路銀と休みをどうするのか」という課題のほうが先!? (汗)


 
久保本家「お待たせしました」と専務と奥様が運んできてくださったのは、ご覧のアテと写真はありませぬが、蔵から “重要伝統的建造物群保存地区” の中心部へ向かう道すがらにある『仲尾かしわ店』の地鶏を使った水炊き。
合わせるお酒は、もちろん “どぶ” ♪

しかし、席は専務と我々3人だけ。親方や蔵人さんの姿がありませぬ。どうやら “おやぢ菌” への感染を恐れて隔離された? (苦笑)
これには訳があるのですが、ここでは割愛♪

「何度にしましょうか?」とかんすけにつけた銚釐に酒燗計を差し込む専務。
「18BYですよね?」と蔵には17BYなんぞある訳がないのにイヤミだぁ〜♪
「60℃超させればいいのでは? でも、あくまでも適当にアチチに」(笑)
さて、最初の燗がつきましたぞ。( ^_^)/□☆□\(^_^ )カンパ?イ!!

水炊きの地鶏はやさしく素直な味わい。そして、いつもながら野菜が甘いこと。
きれいな脂が浮かぶスープを「ズズ〜ッ」で “どぶ” をグビり♪
「あぁ〜、し・あ・わ・せ♪」と一気にグビグビモード突入!! (笑)
チーズの粕漬けやクラッカーに酒粕・味噌・葱を合わせたものを乗っけて…。
鴨ももちろんウンマ?い♪ と喜んでいるところへ「失礼します」と薄酒の地からこちらの蔵人なってしまった奇特な若者、ヨッシーがヤリイカの刺身の出前に。
ホントは「ヨッシーに故郷の味を」で鱈を持ってきたかったんですが、時期的にもきつかったことに加え、荒天続きで漁がなかったため、止むを得ず振り替えたヤリイカを小森谷嬢がきれいに細造りにしてくれました。
つづいて、おやまぁ、蔵の中にいる時と酒を飲む時はまったく別人のIさん。
おやおや親方も登場。合う度にふくよかになっているような…。(笑)
今度はHさんが天ぷらにしたヤリイカを持っていてくださいましたよ。
そして、小森谷嬢にMさんも。もう一人のIさんはどうだったっけ?

とにもかくにも取っ替え引っ替えながら “どぶ” オールスターズと相見えることができたとあっては、グビグビに加速装置がつけられたかのよう。
いつも「蔵内で売る分を減らさないように!!」と口喧しくいっているおやぢですが…
この夜は自らの箍を外して “どぶ” 消費♪
「うまくてどうもスミマセン!!」
あ、これは三平さんのセリフでした。(笑)

【つづく】


いつ来るんかい? “大和編” -2-

写真はありませんが、「これにしてから具合がいいんですわ」という八穀米の朝ごはんをいただいた後、「邪魔者はしばし退散」と大宇陀の街へ。

大宇陀 -1-しかし、“重要伝統的建造物群保存地区” なのは知っていたけど、「なにゆえに松山地区と?」と思ったら、その昔はお城があったんですねぇ。さらに「おいおい、それをいうなら前身だろ?」という『奈良交通の前進』の記述には「さすがバス会社!?」と笑っちゃいましたが、久保本家酒造の紹介を読んで…
「へぇ〜!?」×20♪ (笑)

ここは『薬の館』として知られている大宇陀歴史文化館。左上隅にチラッと見える唐破風の付いた看板と街灯がユニークですな。
 

大宇陀 -2-雨樋

こちらはたぶん『あぶらや』と呼ばれる植田家住宅。改築された部分の木と真っ白な漆喰壁の新しさが際立ちますが、何より雨樋の見事なこと。この銅細工もきちんとした職人さんならでは?
今はさっさと壊してどこにでもある無機的な現代建築に取って代わるのが世の常ですが、江戸末期に建てられたという家を守り継ぐ姿勢を見習う必要がありそうですな。

あきののゆそれにしても、この日の大宇陀は寒かった!!
寒いを通り越して『凍てつく』という表現がピッタリなほど。寒さには慣れている、かつ、面の皮の厚さを誇るおやぢを以てしても、歩いていると顔が痛くなりまする。
「こりゃ、たまらん!!」
飛鳥時代から宮廷の狩場として『阿騎野』と呼ばれていた大宇陀。その名を冠した“あきののゆ”へ逃げ込み、ザブ〜ン♪
夜通し駆けた上に散策で冷え切った身体にお湯がジワ?ッと沁みてきて、「ふぅ〜〜〜」と長い溜め息一つ。

祭りのあと?お湯から上がったらレストランへ直行!!
「瓶ビールくださいっ!!」
やっと温まった身体を急冷♪ (笑)
何せ徹夜ドライブですから、ビールが回ると目がとろ〜ん。和室へ移り、しばし仮眠のつもりがしっかり熟睡。もしかすると大いびきだったかも。(汗)

お蔵に戻ると北の国からのお客さまたちがお揃いできき酒タイムの真っ最中。小森谷嬢の「良かったら一緒に」というお言葉に甘えて、初めての “涼” に “どぶ”、今期の “速醸純米無濾過生原酒” の仕込み違いなど、それぞれピンポイントの温度で燗をつけられたそれらを燗ききしつつ、一人ブツブツ。(笑)
「飛行機の時間が…」と慌ただしく帰られた後には…。

【つづく】


いつ来るんかい? “大和編” -1-

甑置き遅れること1時間。勝手に裏木戸から蔵へ…。
「おはようございます!!」
案の定、この日の作業は既にはじまっておりました。X-)

白衣と帽子を着け、再び蔵へ入ると、釜場ではもうもうと湯気が立ち上る中、二人がかりでの “甑置き(*1)” がはじまります。
熱くないはずはないのですが、黙々と米を張る蔵人さん。もちろん、“抜(ぬけ)掛け(*2)”。


 
「遅かったやない」
暖気入れと声がする方を見やれば、親方(加藤杜氏)。
「一応、時間には外へ出てみたんやけど」
「すんません、渋滞で…(汗)」
「明日、必ず起きて、また見せてもらいますから」
「今、専務を起こしたさかい、良かったら酛の “暖気(だき)入れ(*3)” でも見とって」
で酛場へ。

手元がブレていて分かり難いでしょうが、親方の “暖気(だき)入れ” は二刀流です。
「これ、アル添の酒母やでよう分からんのやわ。純米なら簡単なんやけど」
とさすが純米馬鹿杜氏♪
「それなら新潟へ教わりに来たらいいですわ。何せ得意中の得意ですからぁ」
「そやね」(笑)

間もなく、ホントは社長なのに呼び名は “専務” のままのお蔵元とご対面。
母屋でお茶をごちそうになりながらしばし身体を休めていると、蒸し上がりタイム♪

甑取り揉み

蔵に近づいただけで “蒸米” の香りが匂ってきます。
1階の釜場ではスコップで “甑取り” をする人、取り易いように、そして最後まで米を無駄にしないように、米を寄せる人、蒸された米を、物によっては計量しながら運ぶ人、3人がかりで2階に上げられた “麹米” は2人でほぐしながら適温まで放冷し、“麹室” へ引き込まれます。これを室内で受け取る人が1人。今年もここ久保本家では親方と5人の蔵人、都合6人による仕込み。この顔ぶれで2年目。息の合った作業が黙々と進みます。

麹室“室” に引き込まれた “麹米” は “床” の上でさらに細かくほぐされます。すべての米に “もやし(種麹)” が均等に行き渡るようにするため、不可欠な作業ですな。

暑い “室” 内での作業に備え、薄着になった親方が腕を消毒しながら “室” 内へ入ると…
ドアがピシャリと閉ざされ、ガラス越しに中の様子を伺うしかありませぬ。
取材陣はここまで!!
となったところで、こちらは朝の燃料補給♪

【つづく】


 
*1:甑置き こしきおき
  水切りした白米(原料米)を甑の中に入れること。
*2:抜け掛け ぬけがけ
  甑から蒸気が上がりだしたら、少量の白米を甑の中に徐々に入れ、蒸気が吹抜けてきたら、
  吹抜けたところへ少量の米をかける。
  蒸気は抵抗の弱いところから抜けてくるので、そこへ白米を順次置いていく方法。抜掛け法。
  あべこべに先に白米を甑に全量張り込んでから蒸すやり方を “一時置き法” という。
*3:暖気入れ だきいれ
  湯を詰めた暖気樽を酒母中に入れて加温したり、暖気樽を動かして攪拌すること。
  暖気樽に詰める湯の温度、投入時間、動かし方、攪拌の程度が重要な条件となる。
  暖気操作。


いつ来るんかい? -prologue-

雪国あのお蕎麦屋さんの改造手術を終えた夜、こう言われながら電話の向こうの杜氏の顔を思い浮かべておりました。
路銀の心配をしつつも「これで行かなきゃ、男が廃る」と腰を上げたのはいいけれども、最初の予定が諸般の事情で急遽キャンセルされ、一度喰らった肩透かしからの再出発♪

高速料金をケチるため大胆なショートカットを企て、走ること2時間余り。雪のない当地からしっかり雪国へと風景が変わりまする。


 
伊勢湾岸道広い長野を縦断し、国外追放(笑)嬢の生誕地あたりから「海老ふりゃぁ〜」の名古屋を避けて東海環状道から伊勢湾岸道へ。片側三車線を時速○○○kmで快適に飛ばしまする。
が、名阪国道へ入って間もなく、久我ICから集中工事による渋滞に巻き込まれ、にっちもさっちもいかず。板屋ICから旧道へ…。

結局、この間の1時間が最後まで響き…
「4時の仕事始めに行きます!!」
が1時間遅れとなりましたが、取りあえず…
着いたぁ〜!!

【つづく】


道中双六 -其之弐-

室生寺「さて、今度は?」とサイコロをふれば…三つ戻って、またもや『一回休み』。
“女人高野” として名高い“室生寺”です。

こちらも同じ総本山とはいえ、“長谷寺” と比べると実に質素ですが、境内には凛とした空気が満ち、静謐そのもの。平日ゆえの疎らな参拝客に交じり、盛りを過ぎた桜とぽつりぽつりと咲き始めた石楠花を眺めながら、石段を踏みしめ金堂へ…。

そこからさらに石段を登ったところが灌頂堂ともいわれる本堂。

双方ともに長年の風雨にさらされ、煌びやかさとは無縁なれど、木組みといい、檜皮葺きの屋根といい、積み重ねてきた年輪を思い起こさせる趣があります。

室生寺奥の院へと続く石段の先にはこれ。奈良時代後期のものとされながら、平成10(1998)年9月の台風7号による無残な姿から修復なった国宝の五重塔。

この修復に当たっては、檜皮が手に入らず、お役所間の縦割り行政の歪みに苦しめられたはずですが、真新しい檜皮が金堂や本堂並みに苔むすまで、また気が遠くなるような歳月を必要とするのでしょうな。
いずれにしろ、この姿のまま後世に伝わることを願って止みません。

駐車場のおばちゃんに教えてもらった “やまなみロード” と呼ばれる奥宇陀広域農道を北上し、R25名阪国道へ。
今度こそ、さようならダス♪ (笑)


道中双六 -其之壱-

いつもの具沢山の味噌汁で朝ご飯をいただき、ご当主ともんさんに見送られながら万葉の地、大宇陀を後に…。
「蔵も見ず、酒も見ず、何しに行ったのか?」というツッコミはご無用!! (笑)

長谷寺「さて、どうする?」とサイコロをふったら…
“どぶ” の総本山 “久保本家” を辞した矢先だというのに、ここまで進んで『一回休み』。(笑)
真言宗豊山(ぶさん)派の総本山、“長谷寺” です。

門前町の細い通りを抜け、階段の先の仁王門をくぐると、ご覧の登廊。リンク先の案内図のようにこれ一本だけではありませぬ。鉤の手を二つ越えて、やっと尾上の鐘が吊るされる鐘楼とどでかい本堂に到達。
折しも堂内ではご本尊を前に法要が営まれ、読経の声が厳かに響いておりました。

花のお寺” も桜がわずかに残るものの、手入れが行き届いた牡丹や石楠花などにはまだ早く、新緑の方が目立ちます。

長谷寺写真は、西参道を五重塔から本願院へ下りながら見上げた本堂。金ぴかの文字が眩いですなぁ。

さすが全国に3,000余の末寺を持ち、 信徒はおよそ300万人といわれる大宗派の総本山だけあって、至る所が立派な設え。
この境内すべてを維持する財源はやはりお布施でしょうが、アウディのハンドルを握る僧を横目に…
「いったいどれくらい上がるのだろう」
と貧乏人は下衆の勘繰りをしたくもなるってもので…。(苦笑)


あおによし

ひむがしの野にかぎろひの立つ見えてかへり見すれば月かたぶきぬ

又兵衛桜“昆布エクスプレス” は鳴門から柿本人麻呂がこの歌を呼んだ地へと。:-)
これも二年ぶりとなる “又兵衛桜” は残念ながら盛りを過ぎ、折からの雨でひっそりと…。

「宅急便で〜す、ハンコください!!」(笑)
挨拶もそこそこに委ねられた荷物を下ろし、駐車場へ。トリップメーターを見れば、前夜から1,045km。よくも走ったものだこと。

久保本家社長でありながら今でも専務と呼ばれることの多いご当主と話していると、「失礼します」と懐かしい顔が…。
今季からスタッフとして加わったK嬢。元気そうでなによりですな。
「食事の前にお風呂へ行ってきませんか?」
と社長に促され、近くの日帰り温泉 “あきののゆ” へ。
「ふぅ〜っ」
お湯が疲れた身体に沁みまする。風呂上がりには当然、一人フライングのビール。
「くぅ〜っ」
こちらはお腹に沁みますなぁ。(笑)

お蔵へ戻れば、おぉ〜、加藤杜氏の登場。
二人のIさんに加え、新しい顔が三人。結構な所帯になりましたねぇ。
「お久しぶりです!!」

と短い挨拶の後は、お待ちかね “どぶパーティー”。
大振りの “どぶ” 用ぐい呑みに注がれた温かい “どぶ” で、かんぱ〜い♪
さぁ、グビグビの開始ですぞ。椎茸の糠漬けがウンマ〜い。
鶏鍋をつつきながら次々に回ってくる “どぶ”。蔵の仕事も終盤ですから、先回のまだ緊張が残っていた顔付きとはまったく別人。みんな、にこやかですねぇ。もんさんともやっとお会いすることができました。

宿代代わりに持参した “どぶH16BY秋火入れ” や “竹鶴雄町純米にごり原酒H16BY” も燗がつけられ、にごり一色の “燗酒楽園 at 大宇陀” は、いつもどおりダウンのご当主を尻目にますます弾け…
おおっとついに「何それっ!?」という凶器が…。
目前で繰り広げられる惨事までも肴に、一人黙々と杯を運ぶおやぢ。
リミッターはとうに外れてしまったようで、相変わらず燃費悪し。X-)

その時、古の地の一室で何が起きていたかは…ご想像におまかせしまする。(笑)