長月の定番酒 -其之弐-

相変わらず20本近い開栓放置が台所の一角を占拠している。
その中で「これはヤバいんだよなぁ」と思いつつ、手が伸びてしまう酒がある。
『日置桜 純米 八割搗き強力 H16BY タンク貯蔵』
サンプルを見せてもらった時から「こりゃあ、やんちゃ坊主だ」とは思っていたけど、開栓2週間ほどなのに、ここまで…。協会7号酵母と強力の組合せは表に出ている数値以上に力強く、半端な飲み手では持て余すことになるかもしれない。
若い酒だから、やや抑えめに…と熱燗(50℃近辺)から冷ます。酸味が旨みに変わりはしたが、力強さはそのまま。ぐいぐいと押し込んでくる。
豚肉の生姜焼。生姜を利かせてもまだ味が弱い。酒のパワーに肉が太刀打ちできないのだ。肉ならジビエなんぞ面白そう。
もずく酢の酸味とはぶつかり、別々のものになってしまう。
鰈の煮付け。後味に苦が残るのは酒が入りすぎか。強めの味付けでもまったく苦にしない。
ふぅむ。7号酵母由来の酸と強力の相性に惹かれはじめていたのに、この癖の強さはかなり肴を選ぶことになるかも。
もっとも、やんちゃ坊主に相応しいおてんば娘を探すこと。それはそれでまた楽しみともなるだろうが…。:-)
誰か「これと良いよ」という肴を教えてくれないだろうか。


中秋の迷月

moon.jpg下総辺りでは某U会諸氏の宴もたけなわ。「穴子の白焼きとだだちゃ豆湯葉刺しが最高ですよ」。絶好調のTMさん。電話の声も弾む。BGMはTBさんの歌声だ。
なのに、こちらはやっと顔を見せたかと思いきや、この後すぐまた雲に隠れ、月見酒もままならず。orz
『奥播磨 山廃純米 スタンダード H15BY』
練れた香味にハーブかミントを感じた14BYに比べると、冷やでも味が多い。造り手の意向に沿ったものだが、熟成による枯れ味やキレが出てくるには中途半端な頃合いなのだろうか。
熱燗(50℃近辺)を超えてから飲み頃に冷ます。
14BYより山廃らしさはやや薄れているものの、旨みたっぷりは奥播磨の持ち味だから、これはこれで良しとしよう。
鮪の山かけ。鶉の卵があれば間に合わせの月見もできたのに…。
里芋・人参・舞茸・蒟蒻・車麩の煮物。またまた精進料理ですかい。それはそれで構わないのだが、今日のは旨みのバランスが今イチだ。酒に負けちゃう。
鰯の南蛮漬け風。これくらい味のしっかりしたアテの方がこの酒には合う。
冷やしトマトで口直ししながら、窓の外を恨めしく眺める夜だった。


長月の定番酒 -其之壱-

− 酒飲みは奴豆腐にさも似たり はじめ四角で末はぐずぐず −
月見も間近、馴染みの店で愚図になるまでと…といきたいところだが、それも叶わぬ。
ならば、酒くらいは…。
『鯉川 純米酒』(H16.12詰)
冷やでジュル。酸もあるが、やや線が細いか。
熱燗(50℃近辺)を意識して燗をつけ、冷ますと、冷やよりも旨みは増すけど、図太さとは無縁。出しゃばらず、かといって軽すぎず、定番としての中庸を得た酒だろう。
豚モモの焼き肉。脂っこさと濃い味付け、こういう味は得手ではなさそう。
もずく酢。芋茎の酢の物。冷や奴。肉じゃが。これ、これ、こっち系が似合うね。
軽快なだけに、味の諄くないもの、素材の味そのものを楽しめるものが良さそう。
ただし、飲み過ぎ注意かも。:-)


15℃貯蔵の開け立てだけにより一層軽く感じたのかもしれない。
この後、どう味が開いてくるか。いつもの如く、開栓常温放置へ。


秋半ば

明後日は中秋の名月(旧暦8月15日)だから、そろそろ日々飲む酒の話に戻しておかないと、『月見酒』を逃すことになりかねない。:-)
『羽前白梅 純米 尾浦城』
冷やでも豊かな酸を感じさせる定番純米酒。これはたぶん15BY。
熱燗(50℃近辺)から冷まそうと思ったのに、その下で留まってしまったため、やや締まりに欠け、酸の浮きが残ったが、定番酒としての実力は申し分のないところ。
豚生姜焼も難なくこなす。しっかりとした酸が舌にまとわりつく油を洗い流してくれるからだ。
里芋・人参・蒟蒻・舞茸・車麩の煮物。これじゃ精進料理だが、野菜の素朴な味も良いものだ。出汁と野菜の旨みが出た煮汁たっぷりの車麩がしみじみうまい。
冷やしトマト。そろそろ地物は終わりだろう。
広島菜の本漬で口を直しながら、杯を口に運ぶ。
定量をきっちり飲んでこの日はほぼ納得の〆。
前日の『清酒竹鶴 雄町純米 H14BY』や『鷹勇 純米吟醸 強力の郷 H12BY』までは酒に押し切られた感があったが、やっと夏の疲れが抜けてきたのかもしれない。


似非重陽の節供

平安時代、朝延のしきたりとして、重陽(ちょうよう)の節供(旧暦9月9日)から上巳(じょうし)の節供(旧暦3月3日)までの寒い間、暖をとる目的で酒を温めて、つまり燗酒を飲んだとされる。
このおかげで、燗をすることにより日本酒の風味がいっそう引き立つことが知られるようになり、その後、洗練されていった酒づくりと相まって、燗の風習は次第に定着したのだが、残念なことに、それは宮中においてのみのことであって、庶民までが燗酒を飲むようになったのは江戸時代も元禄になってから。
全国的に普及したのはさらに遅れて明治になってからのこと。
気の毒に、おいしい話になるといつの世も下々は蚊帳の外か。
過去はともかく、今は『まっとうな酒は燗でさらにうまくなる』こそ、その下々のもの。
『春夏秋冬、酒は燗酒』でいきまっしょい!! 🙂
今年は10月11日(火)が旧暦の9月9日に当たるため、本番はその日に。
それまでは、月桂冠大倉記念館の名誉館長を務める栗山一秀氏が書かれた『燗酒(かんざけ)』でも読んでおかれてはいかが。:-)


【栗山 一秀】くりやま かずひで

    1926年生まれ、京都府出身
    1950年、月桂冠(当時の社名は大倉酒造株式会社)入社。専務、副社長を歴任
    1998年から月桂冠大倉記念館名誉館長

この方が製造に関わっていた頃の月桂冠は、まともな酒もあったんだけど…。


白露

今日は二十四節気の一つ、『白露』。『しらつゆ』ではなく、『はくろ』と読む。
陰気ようやく重なりて露にごりて白色となれば也 −暦便覧−
すっかり色づいた田圃は黄金色の絨毯を敷詰めたかのよう。
これからが刈り入れの真っ盛りとなる。
なのに、台風14号。これ以上被害が広がらなければ良いが…。
西の方の酒米の状況が気がかり。