東奔西走 -其之弐-

本四国道路の鳴門大橋を過ぎ、いよいよ未踏の地、四国へ。
自らを「海士」と呼ぶ、この方との出会いから縁の幕が開く。
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「顔が違うよ」。次に出会う方から聞かされていたとおり、まさに『海のもののふ』に相応しい気魄に満ちた風貌だ。
今の縁をつなぐ若布漁は終わったから、やっと一段落という時期の朝っぱらから押しかけたというのに、飼い犬2匹にはじまり、ご母堂、ご賢妹、ご本人と、家族総出で歓待いただく。
「酒造りも漁師も一緒だね。人にしかできない手間を省いたり、機械にまかせたりしたら、それでお終い」「漁をするなら、山も知らなきゃ」「魚の気持ちになって考えればいいんだよ」。
さすが、地元の軋轢をものともせず、自分の腕一つで全国を相手にする士。次から次に本物を知る者の言葉が胸を打つ。
若布の処理法や道具も見せていただいたが、こちらは内緒。安直に真似する輩からの防止策ゆえ、お許しあれ。
出立の時間が迫り、帰る道中だからと、小雨が降る中、漁に使う船を見せてもらう。
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「あっちの船は魚群探知機にGPSや巻き上げ機、もう至れり尽くせり」「ウチのはなんもついとらん。代わりに季節や潮、天気、水温をみながらの勘が物をいう」「エンジンは4サイクルがええね。静かだし、汚染も少ないから」「後処理もだけど、魚は船に揚げるまでが勝負。それだけは企業秘密」と。
別れ際、海のもののふが手を握ってくれた。その手は魚への愛情に溢れたやさしさでいっぱい。漁の話をするときの精悍な表情は飛び切りの笑顔に変わっていた。
押しかけていってごめんなさい。本当にありがとうございました。>海士Mさん

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