東奔西走 -其之六-
気の抜けたビールになってしまったかもしれないけど、久々につづきを。
初四国の余韻にひたってもおれず、再び本州へ戻り、古の地へ。
ここだけ時の流れが緩やかだったのだろうか。見るからに歴史を感じさせる家並みにその蔵はあった。
こちらを訪ねるのも初めて。写真では何度も見ていたものの、やっと我が目で確かめることができた。
母屋の座敷にご案内いただき、銀行マンから転身された若いご当主のお話を伺う。
話は尽きないが、「夕食前に蔵をご案内しましょう」と、母屋から蔵に移動。前掛けと帽子をつけ、蔵に入り、甑はすでに倒れているが、釜場から順に案内していただく。
足場を上がって仕込タンクに。息の長い醪が残っているため、皆造の予定はまだ立たないと。
すっかり作りかえてしまったという二階へ上がり、麹室やもと場を見せていただく。現杜氏が蔵に入られたのが、平成15酒造年度の仕込みから。その前は「自分が杜氏代わりをしていた」「最初は一から違う造りに戸惑ったり、あれこれ直すというので、貸したくないところから金を引き出すのに苦労しましたよ」と。
お金の悩みは何処も似たようなもの。左団扇のところがあったら教えて欲しいくらい。
話を伺っていたら、杜氏がひょっこり自室から出てこられた。平成14酒造年度に山陰のある蔵でタンクに一本だけ造っておられたときに、そのもと(酒母)を拝見して以来だから、二年ぶりだろうか。
ご自分の目指す純米酒を生もとで造りたいがために"さすらいの杜氏"と呼ばれたという、杜氏にとって無くてはならない道具、半切り。
これで肝心要のもと摺りを行うのだ。
「そろそろ食事の時間ですね」「せっかくお泊まりいただくのですから、今日は杜氏や蔵人たちと一緒に」と。
おぉ、願ってもないことを。
ご当主の言のとおり、このたびは、なんと宿までお願いしてしまったのだ。
それには…。
伺う旨をお伝えしたとき、「近くに宿は?」とお尋ねしたら、「ぜひ家に」と。いくら図々しいおやぢでもそこまで厚顔無恥にはなれないから、何度かお断りしたのだが、強いおすすめに最後は、「じゃあ、お言葉に甘えさせてください」と相成ったのだが…。
いやいや、真相が他にあったとは…。
だが、「云えねぇ、云えねぇ、もう云えねぇ!!」。
墓まで持っていかねばならない事柄ゆえ、これ以上の詮索は、ひらにご容赦を。m(__)m
さては、ヤツの狼藉か。
ヤツじゃないよ。って、誰だ!? (爆)