分不相応なれど
■呑録(旧暦4/28)
情けないことに、この値段になると、貧乏な呑兵衛には清水の舞台から飛び降りるくらいの覚悟がいる。日常の酒としては、明らかに高望みが過ぎるだろうが、浮き世の義理が二つ重なれば、これもやむなし。
同蔵の"自然酒生もと"、"生もとCLASSIC"に感じていた違和感をどこまで払拭できるか。
『大七 純米吟醸 "皆伝"』
冷やで一口みて、「これが大七!? 嘘だろぉ〜」、そう思わざるを得なかった。下のクラスの酒に感じる妙な硬さは微塵もない。いきなり満開の味を突きつけられるのだ。その味わいからすると、吟香は控え目で好ましいが、生もとらしい特長立った香りはない。キレで勝負するより、生もとがもたらすふくよかな酸が持ち味と見た。
ややもたつく感もあったので、55℃ほどで味の引き締めを図る。
冷めながら味をみていくと、熱さを我慢しても味の多さは拭いきれず、積極的にその味を楽しむには、やはり45℃以下まで下がるのを待つしかないようだ。前日飲んだ奈良の生もととは、まったく性格を異にする会津の生もと。良い酒だとは思うが、財布を痛めた以上の感動は、残念ながら味わえなかった。
この日の肴は、ニギスの塩焼き。白子に当たって、いとうれし。豚肉生姜焼きと付け合わせのセロリの炒め物。車麩と椎茸・シメジの煮染め。茄子のゴマ和え。胡瓜の浅漬けとトマトで口を直しながら、味の多い燗酒を噛みしめた夜だった。
ただし、これ、2003.11詰。15℃に1年半置かれたもの。
味の多さからすると、原料米は山田錦かな。
それと、たぶんデパートを意識した意匠だろうが、包装資材に金をかけ過ぎるのでは?
豪華なラベル、瓶の口に巻かれた飾り紙、紐、化粧箱で1,000円は下らないだろう。
余計な飾りで売る酒でもあるまいに…。それとも、これは、やはり『殿下の酒』? 🙂