この米で?
『扶桑鶴 純米吟醸(BL)』
麹米に山田錦、掛米に佐香錦を使って仕込まれた純吟。今まで何度か口にした佐香錦の酒は、いずれも細身で軽快という印象を持っていたが、これは山田錦のようなふくらみと扶桑鶴特有の最後の一押しの強さで、全量山田錦であるかのように誤解しそうだが、この時期から締まった切れがあるのは佐香錦との組合せの妙だろうか。含みに素直な吟香もあり、うまい。
飛び切り燗(55℃近辺)から上燗(45℃近辺)を下回るほどに冷まして飲むと、冷やの印象をそのまま強めたようだ。さらに味がくっきりと浮き出てくる。最後にピンポイントで強さを主張する扶桑鶴の持ち味がいつも以上に好ましく思える。味のふくらみと切れも良い按配の釣り合いを見せ、飲み頃であることを教えてくれる。
豚肉とパインのケチャップ炒めという、非常に癖のある味も難なくこなす。牛肉の佃煮、烏賊の煮付け、かきのもとの時季にはまだ早く、黄菊のお浸しなど和風の味付けにも好相性。
酒が強いから肉をパクパク食べていたら300mlが終わってしまったのに、食い気と飲み気はちょうど良く止まれない。もうちょっと…。
『誉凱陣 純米吟醸 16BY』
明らかに早いのだが、手が伸びてしまった。
熱燗(50℃近辺)にすると、穏やかな吟香とともに滑りよく切れていくものの、如何せん線が細い。まだまだと決めつけ、ペースダウン。肴をつまんで待つこと暫し、ぬるくなったかと心配しながら口に含む。
「えっ!?」。ぬる燗(40℃近辺)を下回った辺りで凱陣本来のボディを感じさせる片鱗が…。
若いだけにこの温度じゃないと痩せてしまうのか。それから2〜3杯、熟成の行く末を想像して楽しむ。
この値段帯の酒になると、さすがに格の違いを見せつける。おかげで定量を超えてしまった夜だった。
まぁ、それは言い訳。(^^;