冷や卸し考
【Twitterでいただいた問い掛けに対して、自分なりに日頃から思っていることをまとめたもの】
新酒時にやむを得ず…という場合を除き、基本的に生酒は認めないのが小店のスタンスです。
せっかく世界に先駆け、最も早く(*1)火入れという技を見出しながら、それを使いこなさない、あるいは使いこなせないことに対して疑問を禁じ得ません。
熟成させてこそうまくなるのがまっとうな酒と思いますから、その酒質の安定を図ることは当然ですし、そのために不確定要素は限りなく減らすに越したことはありません。
そこで火入れの技を用いる訳ですが、ただ一つの欠点は熟成がまた遅れることでしょう。
生詰・生貯は、いずれも自身の酒に求める酒質や型、そして熟度をしっかり見極めている蔵が、一つ一つの酒に最も相応しい香味を活かしたい時に使いこなせば、その存在価値はあると思っています。
ですから、きちんと頃合いを見計らって出されるごく一部の「生詰」には、二度火入れでは味わえない香味があり、その楽しさゆえにイチ押しとする酒もあります。
ただし、風物詩的にただのウリの道具にしてしまっている昨今の「冷や卸し」騒動となると話は別。踊らにゃ損とばかりに煽り立てる方にも、まんまと踊らされる方にも開いた口がふさがりません。
こういうツッコミどころ満載の記述 もあります。(笑)
冷蔵設備もない時代に暑い夏を越え、秋らしい冷気に包まれる頃になってようやく程好く熟した酒を大桶から出荷用の樽に卸す(移し替える)ことから「冷や卸し」と呼ばれるようになった本来の姿からすれば、そう呼ぶに相応しい熟度を得てこその冷や卸しではないでしょうか。
言い過ぎたついでにもう少々。いくら熟成が早いとはいえ、火入れを忌み嫌い、生酒、特にできたままが最上とする無濾過生原酒礼讃には大いなる勘違いとしか思えないのです。
火入れに耐えない酒なのか、はたまた火入れという技を使いこなすだけの腕がないのか。「いい酒は冷やで」という造り手の喧伝が今も持って尾を引いている現状を見るにつけ、自分で自分の首を絞めることになりはしないか。
酒造りというと仕込みだけに目を向けがちですが、蔵から出る時まで、もっと極端にいえば口にされる時までが酒造りでしょう。上槽後の扱い次第ではどんなにいい酒であっても駄酒に成り下がってしまうのですから。
ですから、仕込みの技だけで云々するのは片手落ち。調合と濾過や火入れまでを含めてこその技ですし、それをきちんと確立しているならまだしも、軽視したり、避けて通っている限りまっとうな酒を生み出すことはできないでしょう。
酒造りも新しい米や酵母ばかりではなく、蒸米・濾過・火入れなど、地味ながら基本となる技についてまだまだ研鑚の余地は残されています。疎かにされがちなそうした技にも地道に取り組み、正統な味わいを正しく伝える努力を怠らないこと。それなくして日本酒の復権はないものと思います。
- (*1) ●世界に先駆け、最も早く
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これについては『北山酒経』に「酵」という表現で、加熱殺菌を意味する「煮酒」の技法が記載されているとのことから、不適切と判断し、打ち消し線を入れました。
ご教示いただいたN氏に感謝し、併せて訂正いたします。
【参照】→ Wikipedia日本語版>日本酒>注釈
おやぢ殿のご指導のお陰を持ちまして、
熟成の遅い火入れ酒を5年間以上自家熟成(常温)した旨さに嵌り、困っております・・・(汗)。
そのような熟々なお酒、倉庫に在りませんかねえ?
To 狼亭さん
コメントへのお返事が遅れてすみませんでした。m(__)m
銘柄と金額を問わなければ、ナンボでも!! (笑)
新潟酒を含めてもいいなら、山ほどありまする♪ (汗)
iPhone復活、まずはおめでとうございます!
久々に、こちらのblogも更新復活、、、になるのでしょか?!
火入れと生酒・・・
私はおやぢさまみたいな良い先輩方にいろいろお話を聞けるので
まだイイ方なのかなぁ・・・
ひやおろし、という名前で出しているお酒はいっぱいあるものの、
「コレ・・・夏までに売れなかったから、“ひやおろし”ってつけて売りさばこうとしてない?!」
なんてのがあったり、
なんだか今の市場って複雑で、消費者もきっと分かり辛い状態なんだろうな。。。と思ったりします。
To まき子さん
借り物暮らしではデータを放り込んであるアドレスブックを使えなくて毎回泣いていました。
苦肉の策でGoogle Docsにコピーをあげておいたものの、やはり不便きわまりなく…。(泣)
iPhone 4は画面がきれいな上に動作も軽く、快適ですね!!
ひやおろしはもちろんのこと、日本酒ばかりでなく、我々を取り巻くすべてのソース(source)が玉石混淆ですから。
一人一人がそれを見極めるのは至難の業ですから、やはりそれぞれの分野で人の縁にすがるしかないですね。
いたずらに時間やお金を費やすなら、その縁を充実させた方が手っ取り早く、かつ副次的なメリットも♪
ここもボチボチと戯言を綴っていくことになると思いますので、どうぞご贔屓に♪