睡龍 瓶燗生もと純米
先日の『良い酒って‥』にも書いたことだけど、酒を飲んで「思わず、その造り手の顔が浮かぶ」ことは飲み手にとって実にうれしいことだ。
「まだだぞ、まだ早い」。ずっと我慢していた酒なのに、声を聞いたら衝動的にその禁を破ってしまった。
いつもの如く燗の時間を推し量るために冷や(*1)でジュルジュル。「あらま!? もうこんなに?」。開栓当日というのに、思った以上に味がある。ヨーグルトキャラメルを思わせる乳酸系の含み香。当然、渋、苦が残ってはいるものの、素性の良さと蕾がほころびはじめた歓びに比べたら、それすら些末なことに思えてしまう。
3分30秒。暖かかった日としてはかなり長めの燗をあてる。冷めるのが待ちきれず、冷やが残る杯に注ぐ。猫舌にも飲み頃の温度に加減。「うまいっ!!」。乳酸系の含みはよりはっきり。きれいでありながらふくらみがある。なおかつキレが良い。
ニギスの煮付け、鰤の塩焼き、肉じゃが、ホウレン草と人参の白和えゴマ風味‥。速醸純米でも感じたことだが、一品一品の肴の味をしゃっきりさせる。それに加えて生もとならではの味の厚さ。
ヤバい、酒が進みすぎる。いや、酒だけじゃなく食まで進む。
二年前にお会いした時そのままに、「どうよ?」とにんまり笑う杜氏さんの顔が目に浮かんだ。
ええ、ええ、潔く投了しますよ。「まいりました」。そう答えざるをえない生もとだった。
*1:【冷や】
…いわゆる常温、ないしは室温をいうのであって、決して冷蔵ではない。
混同しないように老婆心ながら申し添えておこう。
某老舗生もと蔵も活性炭素を使わずに、こういう酒を造ってくれたら‥。残念でなりませぬ。
実は‥ 大方ネタバレしていたようだが、『某生もと純米酒』はこれだった。
ああ、こんな風になるなんて‥。二重に「まいりました」です、ほんと。(>_<)
反省とともに、こうした酒と出会えたこと、顔を思い浮かべることのできる縁に恵まれたことを幸せに思うおやぢでありました。最敬礼。:-)