新たな縁

せっかく仙台まで来たのだからと、止せばいいのに、またもや道草を喰いに。
仙台から70km強、昨年暮れに立ち寄ってくれた蔵元を訪ねる。
「お昼目がけてきてください。おいしいそばをご馳走しますよ」との言葉に甘えて、蔵に着くと、「新しい水場を見に行きましょう」と、曲がりくねった道を山に入る。
w_suigen.jpg
実際の水源地は、この滝のさらに上流。すぐ上の山は杉が切り出され、無残な姿をさらしていたが、水源はもう一山奥に入ったところ。立派な建物が…と思いきや、なんと上水道に直結され、蔵ではそれをさらに濾過して使っているという。
自然の湧き水が水道で供給される。山間地ならではだが、何とも羨ましい話だ。
しめ縄がかかっているのは、この下に社があるから。そこに素濾過した水が引かれており、遠くからわざわざ水を汲みに来る人が絶えないと聞かされた。その水を口にしてみたが、やわらかいのにうまみがある。「酒に使うと湧きやすいのでは?」「まぁ、慣れればそれを逆手に取れますから」と。
写真はないが、ご馳走になった蕎麦が絶品。芥子切りとせいろをいただいたが、芥子の香りが鮮やかに立ってくる。シャキッとした辛汁も実にうまい。
何の変哲もない店構えなのに、こんな田舎(失礼!!)でまともな蕎麦が食べられるとは…。おすすめ◎。


w_stock.jpg
蔵に戻って中を一通り案内された後、小路をはさんだ石蔵へ。ここが貯蔵・熟成の肝どころの入口。中には0℃の冷蔵庫もあり、熟度を見ながら使い分けができるようになったとのこと。
w_kikishu.jpg
「せっかくだから、きき酒を」と、先ほどの石蔵からおすすめを6種類ほど選んでいただき、通常の冷やききに加え、燗どうこを使った燗ききも試させてもらう。
都道府県が先を競って開発した最近の酵母は、派手な香りが主体の酸を出さないものがほとんどで,醗酵力も弱そう。「ろくでもない酵母ばかり」と辟易していたが、宮城酵母は協会7号系とのことで、実にしっかりした酸を出してくれる。
今回きいた酒の中では、山田錦の60%純米酒(15BY)がずば抜けて良い。次いで山田錦65%の純米原酒。雄町の純米原酒は15BYだが、もう1年ほど必要か。ま、15℃庫におけば、秋から暮れにかけて楽しみな酒になるだろう。
いずれもフルーツの酸味とも思える酸が味を引き締め、分厚い味わい。香りは思ったより穏やかで、燗で味の強さがさらに前面に出てくる。マニアじゃなくても一口含めば納得できる、分かりやすい酒だ。
ほかには、14BYの本醸造がしっかりしたうまみがありながら、捌けが良く、値段も手頃で良いかも。
「まぁ、じっくりいきましょう」。ありがたい言葉をいただき、実り多い道草になった。
また新たな縁に感謝。

Follow me!

コメントを残す