有るところには有る…かぁ

杜の都へ出かけるとならば、ここは通り道。
以前にアポもなく訪ねた時は、昨秋から本格稼働している新蔵を建設するため、旧蔵が取り壊された後。ようやくその背景を垣間見ることができると、勇んで出かけた。
正面玄関脇の小部屋で担当氏と挨拶を交わし、しばしの歓談後、「せっかくですから蔵をご案内しましょう」と。
しかし、こんな蔵があって良いのだろうか…。見れば見るほど、そう思ってしまうのだった。


これが【新蔵入口】
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しかも人が出入りするだけじゃなく、このドアから原料米まで搬入するのだと。(・。・)
開いた口が塞がらない。
こちらが【麹室】
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なんと、もと(酒母)麹・添麹・仲麹・留麹、仕込みの各段階ごとに使われる麹にすべて専用の部屋が用意されているではないか。
写真は省いたが、すべて和釜と甑で行われる蒸米といい、溜息が出てくる。
ここならではの【もと場(酒母室)】
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仕込み期には、この半切りともとタンクがフル稼働するという。暖気樽もかなりな本数だが、これも生もとゆえの宿命。
「一部速醸もありますから、ウチに来ると、速醸・山廃・生もと、すべてが目の当たりにできると、蔵元さんや杜氏さん、同業者の方々の見学も多いんですよ」。
山廃に関しては、実際に製造してはいないが、生もとから山卸を省くだけだから、その説明に納得。
貯蔵庫も見せてもらったが、空調がない。「あくまでも自然に近い環境で熟成させてこその生もとと、汲み上げた地下水を所々に設けた冷輻射装置を循環させるだけにとどめています」。
仕込みはすでに終わっているから蔵内は静かだが、ここだけは違う。
瓶詰めラインに据えられたドイツ製の【窒素置換充填機】
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三連に並んだ左から、空気を抜いて真空にする→窒素充填→酒充填、クリーンな環境で行う。
ワイン製造では使っているところもあるが、日本酒では初めてじゃないか、とは担当氏の談。
仕上げに正面玄関脇の【ホール】できき酒。
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床は天然石張り、柱や梁は先祖が囲っていた檜、壁は珪藻土塗り壁。しかも、この珪藻土壁、ここだけのものではない。なんと、今見てきた蔵のそれぞれの部屋から廊下や通路まで、すべての壁に使われている。品の良いリゾートホテルか美術館・博物館を思わせる通路を、ごく当たり前にフォークリフトや蔵人の手による蒸米・麹が行ったり来たりする。現場に立ってもミスマッチとしか思えない光景を想像し、再び溜息を漏らす。
奥にあるテーブルに着くと、お蔵のソムリエールが説明しながら、一つ一つの酒をグラスに注いでくれる。グラス置きが陶器のプレートで、これに通常のきき猪口の蛇の目に当たる藍の染めが付けられているという凝りよう。T氏デザインのグラスってとこが鼻につくけど。(^^;
ここは、やはり殿下の蔵であることをしみじみと思うのだった。
老婆心ながら、蔵元諸氏に一言。
従業員をここへ連れて行くのは、絶対に止めた方が良い。ここ並みの労働環境をといわれたら、ほとんどすべての蔵元は立つ瀬がなくなるはずだから。

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有るところには有る…かぁ” に対して4件のコメントがあります。

  1. nizake より:

    きれいになったなぁ…
    昔の面影があるのは酒母室だけだ。

  2. Masamune より:

    生もとのもと立ては変えてみようがないでしょうからね。
    ちなみに、酒造道具はすべて旧蔵で使っていたものを引き継いでいるそうです。
    エアシューターもないこの蔵を12〜13人で回すと聞かされ、タマゲタ、タマゲタ。

  3. 三平 より:

    ほんとに、全然かわってる〜!

  4. Masamune より:

    旧蔵は見ていませんけど、新蔵、良い蔵ですよ。
    原料米の取り回しがたいへんとは思いますが…。

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