遠来の知人が蔵巡りの途中で時間が空いたというので、復路の運転手を確保し、雪が降りしきる中を駆けつけた。
県都の繁華街の外れ。昔、堀が走り、その堀に沿って植えられた柳の下を座敷に向かう芸者さんの姿があったのは、この通りのもっと下手だ。
通りに出されたスタンド看板を目印に細い路地を入ると、町屋を改造した店がある。
カウンターにテーブルが2つというこぢんまりした店だが、2階もある。
『竹鶴 金冠本醸造』の燗酒と、フナベタ・蛸の刺身、魚のツミレ鍋、地鶏焼などを頼み、好みの杯を選んで待つ。
ほっそりとした白磁の徳利で熱燗ほどにつけられた竹鶴の登場。端反りの杯に注ぎ合い、4ヶ月ぶりの再開に乾杯。
お通しのホタルイカと菜の花をつまみながら宴が始まる。フナベタは淡泊だがもっちり感もあって竹鶴に良く合う。『群馬泉 山廃本醸造』も追加。どちらもこちらでは嫌われもののしっかりとした色がある。魚のうまみたっぷりの鍋が出てきた頃には『奥播磨 山田錦8割磨き』も。
4ヶ月ぶりだからつもる話も多々あるが、三月の声を聞いてから知人の地元では不幸な出来事ばかりが続く。こと、発端となった事件の難局打開はなかなかたいへんそう。どうも腹案があるらしく匂わせてくるので、これこれ然々でしょうと当てずっぽうを口にしたら、「ど、どうして知っている?」と目を剥かれた。当たるも八卦、当たらぬも八卦、知らない者の強みだ。
田舎では親戚筋との柵もついて回るから今後どうなるのか。外野はただただ静観するのみだが、きちんと名跡を守る体制が築かれることを望んでやまない。
重たい話が続いたので気分転換を。持参した『羽前白梅 純米 尾浦城』と『扶桑鶴 純米 高津川』を燗をつけてもらう。定番といえる価格帯の酒がきちんと燗で飲めるのは無上の喜びだ。
手が空いた店の主との酒談義をはさみながら、夜は更けていく。気がつけば夜中に近いではないか。
慌てて勘定を頼んだが、その金額を聞いてびっくり。結構飲んだし、途中から一人加わったにも関わらず、トンデモな値段。「えっ!? ホントにそれで良いの?」と聞き直したくらい。
翌朝、中通りへ向かうという知人を宿に送り、激しさを増す雪の中を帰路に着いた。
気持ちの良い酔いに身をまかせると一眠りできてしまう。この距離だけが恨めしいが、地元で飲みにいける店がないと常々こぼしていた鬱憤を少しは解消できそう。


ただし、燗でうまくなるまっとうな酒はまだ少数。香り重視の歪な酒が半分以上を占める。
燗に馴染めば、到底飲めなくなるであろうが…。主も「燗で飲んで欲しいんだけど、まだ冷やが圧倒的。どうしたら燗に向いてくれるか」と。
アル添薄酒・炭酒は取りあえず排除したから、次なる試練はプンケバ冷や酒と燗の道。
TANKさん呼んで、ミニ燗酒楽園でもやろうか。(^^;