おやぢは西へ -其之弐-

智頭急行に沿って鳥取へ向かう。志戸坂峠道路ができてから、ここの山越えは格段に楽になったはずだ。
縁を結び損ねたお蔵の近くをこっそり抜け、目的地方向へショートカット。さあ、前も空いたと、アクセルを踏み込んだ矢先、前方で逆三角形の『止まれ』旗を振る人が…。
え〜っ!? こんなところでねずみ取りを!? 貧乏人からむしり取ってどうする。<鳥取県警 orz
「検問中です。免許証を…」。差し出すと悪人面に見えたのか、しつこく見ている。「どちらまで?」「○○へ行くんですけど」「気をつけて行ってください」。あ〜、良かった。冷や汗ものだったよぉ〜。
wakasa01.jpgこれが目的地に近づいた目印。
しかし、どこへ行ってもあるようになったねぇ。コッココ、コメリ〜♪
おやぢにとっては、隣の雑貨屋なんだけど。:-)
国道を折れ、線路を渡ると、目指す宿場町。
2月にmacjiroさんにひと舐めさせていただいた『槽汲』と、7月にnizakeさんから譲っていただいた『純米にごり原酒 火入れ』で、すっかり骨抜きにされてしまったお蔵がここにある。
「あ、あれじゃない」「おぉ、ここだ、ここだ」。
入り口で声をかけると、開口一番「え〜!? 早かったですねぇ、時間が合いませんよ」と、blogでやり取りは交わすものの、これが初対面の息子さんが笑顔で迎えてくれた。
事務所でご当主、杜氏さん、奥様とご対面。やがてご当主の弟さんが加わり、先代までご登場。お蔵あげての歓待に恐縮するばかり。何せ、この時はまだ素面ですから〜。(^^;
「小さいですけど、蔵を…」とご当主に促され、杜氏さんから蔵をご案内いただくことになった。
造りを終えた蔵の中にはポリ桶がずら〜っと並ぶ。こちらのもう一つの売り物、「奈良漬」づくりの真っ盛り。何度も漬け替えると聞かされ、びっくり。ウチでは粕に入れてからはそのままだったはずだから。
奈良漬づくりでは、ご当主の弟さんが腕をふるわれるとのこと。
その奥、蔵の入り口前が洗米や蒸米など、原料処理のスペースになっているが、見慣れた釜場や甑は見当たらない。「はて?」。その気配が伝わったのか、杜氏さんが「これで蒸すんです」とかわいい器具を。「これで掛米も?」「ええ、小さな仕込みですし、ほとんど一人ですから」。ひょえ〜!! (@_@)
だが、これはまだ序の口だった。
蔵に入って、「これがもと桶です」で、二度びっくり、ク〜ラクラ。
「U先生に試験醸造やなと言われました」と杜氏さん。う〜ん、確かに。流行るラーメン屋のスープを取る寸胴の方がもっとでかいかも。加えて、杜氏さんお手製の暖気樽が…。いやいや、これは内緒にしておこう。:-)
ota01.jpgその隣には役目を終えた槽が。コンパクトながら、うまく据え付けられている。
奥にある冷蔵庫かと思えるプレハブが麹室。結露の心配もないとのことで、これは経済的だ。
その反対側と横に、H16BYで仕込まれた7本の貯酒タンクが並ぶ。
2階に上がると、古い酒造道具やら、税務資料、販促品の類が並べられていた。
初めて目にした墨で書かれた移動簿は『奈津の蔵』の世界を彷彿させるし、「あぁ、昔は看板といえば、みんなこれだったなぁ」と、水色の地の琺瑯看板を懐かしく眺める。
階段の裏手に今は使われていない麹室が…。中に入れてもらって杜氏さんの話を伺う。
蔵へ向かう通路に並べられたH16BYの全品種。
右端は、今や幻となった1番娘。まだまだ渋い2番娘。3番娘はあの『槽汲』の記憶を呼び覚ます。ちょっとすました4番娘。硬い中に力強さを秘めた5番娘。内弁慶な6番娘は熟成で化けそうな予感。『純米にごり原酒』の元になった7番娘はいかにもお手つきした方の好み。:-)
ota02.jpg「お昼を用意してありますから、どうぞ」と案内された部屋には、サンシン製の『かんすけ』が湯気を立てている。
昼酒に弱いおやぢが「どうされますか?」の問いに抗えるはずがありませぬ。「後はまかせたよ」の一言でドライバーズシートを放棄。もちろん返事は「いただきます!!」。
心づくしのお料理をいただきながら、『燗酒の舞』のはじまり、はじまり〜。
正面にご当主、脇に杜氏さん。ご当主の隣には弟さん、その脇に息子さん。男性群が総出でお相手してくださる。
燗上手、すすめ上手のお二方からお燗のついたお酒を次から次へと注がれ、すっかり『遠慮』という言葉を忘れたおやぢ。
持参した7番娘の開栓放置も燗をつけていただき、蔵のみなさまにもお裾分けです。
佐藤阡朗さんの明朱馬上杯、松栄堂の純銀鎚器一口ビアカップ、九谷焼の高台杯、某大手メーカーの販促磁器杯など、息子さんと約束していた持参の器を試していただきながらも、注ぎ手の一糸乱れぬコンビネーションにすっかり舞い上がってしまう。
時節柄、衆議院議員選挙の某候補者がご当地にやってこられ、すぐご近所で街頭演説を。
実は… この辺から記憶が怪しくなっている。
杜氏さんや息子さんと盛り上がって、『徳光』というあだ名までいただき、それまで酒の肴にしてしまったのは憶えているのだが…。
気がつけば、日暮れの遅い西域でも夕刻という時間。
初めてお邪魔したお蔵で厚かましいにも程があろうというものだが、壊れた蓄音機のように「同じことを何度も喋っていた」とは後で聞かされたカミさんの言葉。気を利かせて暇を請えばいいだろうに、この○嫁は…。orz
いったい、どれくらい頂戴したのだろう。ただでさえ少ない売り物をいたずらに浪費させたおやぢ、最後は千鳥の舞でみなさまとお別れ。ただひたすら名残惜しく、後ろ髪を引かれたのだった。
これに懲りず、また寄せてくださいまし〜。
【つづく】


「おいおい、いい加減にしろ!!」とは陰の声。(-_-;)

Follow me!

おやぢは西へ -其之弐-” に対して6件のコメントがあります。

  1. 燗四郎 より:

    的確なレポートに感謝です。
    悪人面なんかじゃありませんよ。恵比須顔です。徳さん!

  2. おーたろ より:

    いえいえ。
    とっても楽しかったです!
    ぜひぜひまたお立ち寄りください。

  3. nizake より:

    鳥取県警は県民が金を持ってないことを知っていますから、県外ナンバーを狙います。
    つかまっても払えない県民です。

  4. Masamune より:

    >燗四郎さん
    あまり推敲する暇がないまま上げちゃったので、小間切れ肉がくっついたみたいになっています。
    お許しを。m(__)m
    徳です。
    『此世(このよ)のなごり夜もなごり 死にゝゆく身をたとふれば あだしが原の道の霜 ひとあしづゝにきえてゆく』
    お初と道行き、迷い舞い。徳です。(^^;

  5. Masamune より:

    >おーたろさん
    http://1shuan.com/relation/ のように早く公にしたいもの。
    今度は造りの時期に山陰ツアーをやりた〜い。:-)

  6. Masamune より:

    >nizakeさん
    県外にも金を持ってない奴がいることを教えてといてね。
    現物納付か、体で払うか…。(^^;

コメントを残す