帰るといきなり老父から
「今飲んでいる酒、しょっぱいぞ。日付を見たら19年の詰めだし、なんでこんな酒、飲ませるんだ」
とお小言を頂戴した。

確かに塩のミネラル分を感じさせる酒に出会すことはあるけれど…
「あの酒が?」と追試しようにも「空じゃない!?」
その空の一升瓶からわずかに残った一垂れを杯に受けて…

鯉川■鯉川 特別純米 H19BY
老父母の定番酒♪
「へぇ〜、結構酸もあるし、まだ若いけど味乗りも案外早い」
という「うめぇじゃねぇか」きき酒を受けて…
「しょっぱかったとしたら、口の所為でミネラル分を異常に強く感じたんでしょ。それに、まっとうな酒はきちんと寝かせないとうまくならないから、一年や二年でガタガタいいなさんな」
とまるでビギナーに説明しているようなもの。

もっとも、大正後期生まれの老父が酒を飲むようになった歳には既にアルコールの添加(1939)が行われ、その10年後には糖類、そして挙げ句には酸味料まで加えられた、いわゆる三増酒の試験醸造がはじまったのですから、そうした酒しかなかった時代が人生の大半を占める訳でして、或る意味、最も不幸な世代の一人でありますな。
しかも、当地はアルコール添加された酒が今以て幅を利かせている土地柄ですから、米のうまみ・有機酸・熟成に対する古い常識を覆すのは容易ではありませぬ。

それにしても身内からクレイムを受けるとは思いませなんだ。
取りあえず石川杜氏の「間違いだらけの酒常識」を読んでもらいましょうか。(苦笑)