西方見聞録 “竹原編” -逸-
最初にお断りしておきますが、極めて 長い!! デス♪ (笑)
「おはようございます!!」
とまだ閉まっている扉を開けて、そのまま奥へ入ると奥様が…。
「こちらでお茶でも」
「蒸しが上がったはずですから」
と挨拶もそこそこに蔵の中へ。
“釜場” では、ご覧のように “蒸し取り(甑取り)” の真っ最中。
ポリの桶に一回当たり10kgほどの蒸し米を入れ、肩に乗せて運ぶ蔵人さんたちの姿が目に飛び込んできましたが…
「あれれ、杜氏は?」
その巨体を探すと…、いました、いました。
昨年から “酒ゴジラ” あらため、“酒モアイ” と呼ばれているこの方は、柱の脇で一人黙々と “ひねりもち” を製作中。
今日の蒸し加減はいかがだったのでしょう。
手が空くのを待って「おはようございます!!」につづき、短い挨拶を交わしたのも束の間、杜氏を含め総勢5人。蒸し上がった米は待ってくれませんから、放冷のための “蒸し米” を広げる作業に湯気が立ち込める蔵の中を自ら駆けずり回られます。
じっと見ていると「手を洗ってもらえば、触ってもいいですよ」とのお言葉に甘え、少し手に取って硬さを確認するために握ってみる。「ふぅむ、島岡さんよりちょっと硬いかな」とそのまま口へ放り込み、モグモグ。あくまでも噛み応えで再確認するためですよ。と言い訳を。(笑)
そして、冷まされた米は間髪を入れずに “麹室” に引き込まれ、“床(とこ)” の上でほぐしながら均一に広げられます。
「これから “もやし” を振りますから、中へどうぞ」「いいんですか?」と尋ねながらも足は勝手に “麹室” へ向かっていました。
作業台の回りを回りながら “もやし(種麹)" を振る杜氏の後から、全体に麹菌が行き渡るよう、さらにほぐして…。
「あれれ、またぁ?」「雄町純米の “添” に使う麹ですからたっぷりと」「なるほど」
右の写真を大きくするとレンズに付着した “麹菌(Aspergillus oryzae:アスペルギルス・オリゼー)” が…。
そのまんま“もやしもん”♪
“室仕事” が終わった後は、杜氏とともに二階へ上がり、広々とした “酒母室” へ。
左から “生酛純米吟醸”・“生酛純米”・“雄町純米” が二本と、右手にもう二本の酒母タンクが並んでいました。
目の前で “櫂入れ" や “暖気(だき)入れ” を行う杜氏。時々手を休め…
「放っておいても手を加えるより自然な経過を辿るんですよ」
「生酛は昨日の “温み取り” で、またもや酵母を大量虐殺してしまいました」
とユーモアを交えて、臨時の『酒母講座』や『生酛講座』が開講されます。
スプーンをお借りして、“酛” の試食タイムも♪ (笑)
その結果、おやぢのメガネに適ったのは、これ。
左端の “生酛純米吟醸” 用 “酒母”。やんちゃ過ぎない程良い酸と上品な後味が◎。
何しろ「放し飼い」ですから、空調設備などは一切ありませぬ。
が、洗い場のタオルは酵母や仕込方法別に…。
「放し飼い」とは決してただの育児放棄や手抜きではなく、酒造りの長い歴史や伝統を踏まえ、「やらなければならないこと」「やらなくてもいいこと」をきちんと区別できているからこそでしょう。
その「やらなくてもいいこと」をしないばかりに、杜氏自ら「放し飼い」と称するものの、極めて正統な造り。自然体のなせる業かと。
「さて、そろそろ」
と生憎の雨のため雨合羽と鍔付き帽子という珍しい出で立ちで作業をしていた杜氏に促されて、階下へ。
“会所部屋(休憩室)" へ入れていただき、蔵人さんたちと一緒にお茶タイム♪
お茶請けは、今朝の “ひねりもち”。
「蒸しがうまくないときれいに膨らまないんですよ」
と焼かれてパリッとした外皮が全面に広がっているのは、うまくいった証しですな。
お焦げと醤油が香ばしくて、ウンマ〜い!!
ちなみにこれ、雄町70%の“ひねりもち”。
休憩が終わると、杜氏と蔵人さんカップルの手になる “洗米” 作業。
時間を計りながら淡々と進む洗米。息が合った動きに惚れ惚れ。
って、いつもいつも男に惚れてどうする!? (苦笑)
この洗米機を使っている場面は初めてでしたが、実に優れもの。
“浸漬(吸水)” のため水を張られた桶に浸けても白い濁りが出ません。
手で洗うより手間もかからず、しかも、仕上がりはそれ以上で文句なし。まさしく文明の利器ですな。
元は給食用だったはずですけどね♪
ここで午前の部が終了。
専務と連れ立って、近所の “江戸そば 遊山" へ。
おすすめのお好み焼き屋さんがお休み、かつ、数日前に案内されたはずのもう一軒はお口に合わないご様子。
「広島へ来て江戸そばというのも…」
と渋っていた専務でしたが、雨も降っていますし、ご近所にしましょ。
本日は真面目に「昼酒なし!!」で。本音は、ちと残念。(笑)
お蔵に戻ったらお客様が雄町、じゃない、お待ちでした。X-)
お忙しい中を差し繰っていただいたYさんとご対メ〜ン♪
すでに居酒屋を開くにも充分すぎるほどの在庫をお持ちにも拘わらず、売店でうれしそうにお酒を買い込まれるYさん。あ〜あ、また奥様の目が…。知りませんよ♪ (笑)
「せっかくですから生酛の面でも見ていってください」
と午前の部の復習を兼ね、Yさんとともに再び蔵へ。
“酒母室” に上がると、「おぉ〜!?」。
午前中に櫂を入れても死んだふりしていた生酛純米の “酛” が息を吹き返していましたよ。まるでマントル対流のように、或る一点に潜り込んでいく “生酛”。
「あの辺に何かいますね」と杜氏。
「すると、この辺りはフォッサマグナ?」と悪乗りおやぢ。
あの “雄町純米" の経過簿には「ボーメ:17.8・酸度:4.5」と♪
一階へ下りて、“雄町純米" 用の麹を。しっかり破精(はぜ)込んだ “総破精” 麹を見せてもらう。
「しっかり溶かして、味を出してやらなければなりませんから」
午前中はまだ二階にあった61番タンクの “雄町純米” 用酒母は仕込タンクに移され、臨戦態勢に。
しかし、勿体ないことに、品温をコントロールできるサーマルタンクを使いながら、その機能はちっとも使われず、ただの容れ物と化しています。
余所のお蔵関係者が知ったら、腰を抜かしてしまいそうですが、ここでも実に奔放ですこと。(笑)
午後の休憩を終え、“貯酒庫” 二階へ。
“上槽” を終えた今季のお酒たちがずらりと並べられ、いよいよお待ちかねの昼酒タ〜イム♪じゃないですよ。
至って真面目なきき酒の開始♪
うぅむ、新酒ばかりですから当然、「渋〜い!!」のばかりですが、
「えぇ〜っ、もうこんなに!?」もあれば、
「これ、がっちり煮るとうまいんですよ」とお墨付きの一本も。
「へぇ〜、こんなお酒だったのね。明日、積んで帰りますっ!!」
と即、お手つき。
お帰りになるYさんを玄関でお見送りした後は、我々も夜に備え、ホテルへ。
今回の遠征でハンドルを譲ったのは、この数百メートルだけ。一通りきき酒を終えた後は、吐き出すのが勿体なくて、ぜ〜んぶお腹に納めてしまいましたから♪
早朝からたっぷり8時間。“酒毛愛” 杜氏につきっきりで教わった “酒造講習” は、いよいよ佳境、夜の部へ。 (笑)
【つづく】
あれって新酒だったんですね、それを煮てしまうとは。
米だけ地元です。
ICから5分くらいですので寄って下さればお湯でも差し上げたのに。
>HNさん
そうだったんです♪
煮ないで中途半端ではかえってダメみたい。しっかりアチチに!! (笑)
そちらを通るのはいつも丑三刻ですから、化けて出たと思われるのも…。(笑)
早く敦賀〜小浜西間ができないかなぁ、と。